かわら版 ~石橋編 その八~

かわら版 ~石橋編 その八~
「エリクサー」という言葉を聞いて何を思い浮かべるでしょうか?

多くの人は某ゲームの体力や魔力を全回復する薬、弦楽器を嗜む人であれば高級弦メーカーの名前。「エリクシール」と聞けば、化粧水の銘柄を思い浮かべるのではないでしょうか。医学が現代のように発展する前の中世では、いかなる病も治し永遠の命を得ることができる「賢者の石」を作り出すことが当時の錬金術師の究極目標だったとされており、「エリクサー(エリクシール)」はこの賢者の石をもとにして造られる液体、万能薬を指す言葉でした。

微生物やウイルスという概念がなく、衛生環境も整っていなかった時代、霊薬を求め当時の錬金術師たちはありとあらゆるものを火にかけ精製したのだと想像します。その過程の中で、醸造酒を火にかけたところ高純度のアルコールが精製され、その苛烈で純度の高い液体を口にし、これこそが万能薬に違いないと信じたのでしょう。これが現代に至る蒸留酒づくりの基になったとされています。

諸説ありますが、アラビアでは8~9世紀頃に蒸留技術が確立されており、イスラームのイベリア半島侵攻あるいは十字軍の遠征とともにヨーロッパにもその技術が伝わったとされています。コーランで飲酒が禁じられていたアラビアでは蒸留酒の研究は進まず、のちに蒸留技術が伝わったキリスト教圏で発展し、ラテン語で「アクアヴィーテ(生命の水)」と名付けられたその液体はヨーロッパ各地に広まっていきました。ウイスキーの語源もゲール語(当時のアイルランド島/ブリテン島北部一帯の言語)で“生命の水”という意味を持つ「ウシュクベーハ」から転じたものといわれています(余談ですが、蒸留酒全般を「スピリッツ(精神)」と呼ぶのは、スピリッツの語源がラテン語のspirare(息/吹く)に由来し、肉体に超常的な何かが“息”を吹き込むことで「精神」が宿り生命活動を開始するという考え方があるそうですが、蒸留酒を醸造酒から蒸留で“精神を抜き出したもの”と考え、スピリッツと名付けられたのだとか)。

ロベルト コッホによって、微生物(病原菌)が感染症を引き起こしていると証明されるのは1876年のこと。17世紀のいわゆる「科学革命」以前は宗教的な考え方がより優勢であり、各地の修道院で様々な「エリクサー」が秘伝の製法で作られていました。何種~何十種もの薬草(ボタニカル)を漬け込んで作られたこの薬草酒が今日のアマーロの原型となったとされています。

いつもながら前置きが長くなりました。今回は“一万通り考える男”シモーネ率いるサバディとジュスト オッキピンティ(COS)のジョイントベンチャー、ナトゥラーレが造る「ビター(アマーロ)」のご紹介です。

「アマーロ」と言われて、特定の銘柄が思い浮かぶ方はどのぐらいいらっしゃるでしょうか?アマーロはイタリア語で「苦い」を意味する言葉で、苦みのあるリキュールをそのまま「アマーロ」(英語で「ビター」)と呼びます。アマーロだとピンとこなくても「カンパリ」と言われれば、色や香りやどんなボトルかが思い浮かぶ方も多くいらっしゃるのではないでしょうか (カンパリのエチケットにも”Bitter”という表記があります)。

ただ、アマーロやリキュールを多く嗜む方には「アマーロ≒カンパリ」と説明されると抵抗があるかもしれません。薬草といっても、草や茎だけでなく木の皮や根っこ、そして地域によって生息する植物も異なるため無数の組み合わせが存在し、色も香りもその苦みの度合いもメーカーによって多種多様です。苦いリキュールの総称なので厳密な定義づけはないのですが、ゲンチアナ(リンドウ科の植物ゲンチアナの根/根茎)、アッセンツィオ(ニガヨモギの葉/茎/花)、ルバーブ(大黄の根茎)が苦味成分の主体というものが多いようです。

ゲンチアナ:健胃(消化不良、食欲不振、胃もたれ、胃痛、胸焼け)、メラニン生成抑制
アッセンツィオ:健胃、駆虫、強壮、解熱、抗ウイルス
ルバーブ:消化促進、血行促進 (漢方で使われるものは品種が異なりますが、お通じの薬の主成分)

そして、それぞれ上記の薬効があるとされています。文字通り薬草酒ですね。(※注 アマーロの薬効を謳うものではありません)

シチリアを代表するアマーロに「アヴェルナ」という銘柄があります。1868年創業で、地域社会に貢献した創業者がシチリア島中部のカルタニッセッタにある修道院の秘伝のレシピを伝授されたとされています。他の地域と明確に異なるのは、豊かに実る柑橘類の皮をふんだんに使用しているということと、蒸留酒だけでなくワインもベースのお酒として使用されていること。オレンジの香りが主体にあり、そのあとに苦味がくるというのが他地域と明確に異なります。

アルプスを背にするイタリア北部のアマーロが高山植物を用いるのが必然であれば、シチリアで造るアマーロに柑橘類や地中海のハーブを用いるのも必然だったのでしょう。そして、シモーネがアマーロ(ビター)を造ろう、となったときに彼らがチョコレートやマードレで表現していること、そしてワインもブレンドするのであれば、と考えたときにすべて最高のもので造ったらどうなるのか、ということを表現したかったのではないでしょうか。彼らのビターはオレンジピール、タンジェリンピール、シトロン、ニガヨモギ、ゲンチアン、ルバーブというシンプルなレシピで、ベースのワイン比率もより高いものとなっています。

ここでおすすめの飲み方をいくつか紹介します。



・オンザロック:ナトゥラーレのビターやヴェルモットの特筆すべき点はその「飲み心地の軽さ」にあると思います。ベースのワインが素晴らしいうえに、砂糖(もちろんオーガニック)も控えめ。ストレートも良いのですが、特に暑い時期は、オンザロックで飲むことで清涼感が増します。ベースのワイン比率が高いためアマーロにしてはアルコール度数が低めですが、それでも21度あるのでハイペース注意。

・アメリカーノ:ヴェルモットとビターで作るカクテル。ヴェルモット1:ビター1:炭酸水1~2(お好みでオレンジスライス、レモンピール)。もちろんヴェルモットはナトゥラーレのヴェルモット ロッソで!ヴェルモットに含まれるハーブやスパイス、ボタニカルが加わることで香りはより複雑に、味わいはポップにまとまります。ちなみに炭酸水をジンに変えると「ネグローニ」になります。



・Modicano Bitter(モディカーノ ビター):現地モディカにある直営のバールでも提供しているオリジナルカクテル。ビター2:アランチャータマードレ1:炭酸水1~2。はい。例のあれの組み合わせです。しかしながら酒呑みも唸ること間違いなし!

無限の組み合わせがあるのが割りものの楽しさ。ルーツを知ることで、より興味を持つきっかけになったのなら幸いです。あなただけの組み合わせを是非見つけてください。長い文章を書いて疲れてしまったので、エリクサー飲んで全回復してきます(文章量に胃もたれしてしまったあなたも是非)。

【かわら版 石橋の飲んでもらいたいリキュール!!】
銘柄:Bitter (Cerasuolo di Vittoria) / ビター
造り手:Naturale / ナトゥラーレ
地域:シチリア
希望小売価格 (税抜) :5,000円

銘柄:Vermouth Rosso(Nero d'Avola) / ヴェルモット ロッソ
造り手:Naturale / ナトゥラーレ
地域:シチリア
希望小売価格 (税抜) :4,800円

◆◇特価条件◇◆
◎条件1:1本~のご注文→掛率3%引き!
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対象期間:2025/7/24(木)~2025/8/22 (金)出荷分まで

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